「SOS、助けて。私閉じ込められているのよ。」
突然の電話に、緊張しました。
電話の主は、今年90歳になる知人です。
しばらく話しているうちに落ち着かれ、
状況が分かってきました。
どうやら彼女は、有料老人ホームに入ったようです。
本人の想い
「訳も分からないまま、ここに居るのよ。」
「誰とも話ができないの。みんな車椅子で、黙っているの。」
「こんなところに居たらボケるよ。」
「とにかく此処を出たい。元のマンションに帰りたい。」
あなただけが頼りなの、と言われ早速面会に伺いました。
彼女が居るのは、全国展開する大手の有料老人ホームです。
入居一時金にしても毎月の利用料金にしても、決して安くはありません。
2年ぶりに会った彼女に、目立った衰えや認知症の兆候は感じられませんでした。
ただ、歩行が困難なようで、一人では外出できず
「閉じ込められている」と感じていました。
「朝昼晩食べてあとは部屋に居るだけよ。」
話好きの彼女にとって、誰とも話せない毎日が辛いことは分かります。
6月末に入居となったのは、
娘さんが一人で居るお母様を心配して手続きをしたとのことです。
お嬢さんは、海外に生活の拠点がありやむを得ない選択だったと思われました。
「此処を出たあと、どうするの。」
住まいの地域包括支援センターに相談して、
介護保険プラス有料サービスを利用する。
有料でお買い物に同行して貰うお手伝いさんを頼むこともできるよね。
いろいろ話してみましたが、「退去手続き」はお嬢さんでないとできません。
そのことを話すと、
時差11時間、夜中にもかかわらず、娘さんに国際電話をかけました。
お嬢さんの想い
「みんないるけれど、誰とも話ができないの本当に孤独よ。どうにかして。」
電話を替わり、在宅での介護についてお嬢さんに提案してみました。
「母はそちらに行って、今は元気になったと思います。
連絡を受けた時は、衰弱して脱水症状だったのです。」
在宅での介護も考えましたが、その段階ではなくホーム入居の方が安全だと判断し、
母も同意しましたとのことでした。
入居して、3週間足らずで慣れないのもあるでしょうが、
少なくとも彼女は他の方よりは元気そうで、寂しい気持ちは分かります。
職員さんを話し相手にすることも難しいようです。
「できるだけ、お母様とビデオ通話なさるのはどうでしょう。」
「AIを話し相手にすることも、お母様ならできると思いますが。」
提案したところ、来月帰国しますので、それもやってみます、とのことでした。
夜中の電話の非礼を詫び、それでもお母様の率直な思いを伝えられたことと、
お嬢さんの想いも伺え、少しでも善処できればと願いました。
元気なうちにしておきたいこと
彼女はとてもクリアな方で、海外旅行はお手のもの、
お嬢さんの住む海外への航空券も 一人で手配ができる人です。
そんな彼女でも、
足が衰え歩行が難しくなると一人暮らしの日常生活は困難となりました。
ホームへの入居も理解したものの、実際に入ってみると思った以上にギャップがありました。
私は、今まで有料老人ホームを3か所見学しました。
1か所は、多くのホームがそうなのでしょうが、
建物だけで庭や他の施設はなく、ほぼ室内での生活に限定されます。
2か所目は栃木県にあり、
隣接するホテルの大浴場やロビーも自由に使え2泊の体験入所はとても快適でしたが、
間もなく閉所となってしまいました。
3か所目は、建物以外にも広い敷地で散歩も自由にでき、
図書館があるなど施設も申し分なく、趣味のサークルが30もあるとのことでした。
しかも高額な費用ではありませんでした。
有料老人ホームも様々です。入居にかかる費用も異なります。
いざ入居するとなると、費用は勿論ですが周りの環境、風景、
入居者さんの状況、施設の雰囲気は住み心地を左右しますので、
快適に過ごす上で見過ごせません。
今回のことで「住む場所は、元気なうちにしか選べない。」改めて認識しました。
日常生活に支障をきたすような状況は、誰にでも想定できます。
老後は、施設に入るか在宅か、という二択ではありません。
どこで暮らしたいか。
どんな景色を見たいか。
誰と話したいのか。
最後まで自分らしく生きるためには、
元気な今だからこそ考えておく必要があります。
そして、施設に入ろうと思うのであれば、早めに検討し調べてみるべきです。
自分はまだ大丈夫と思っても、
年年歳歳いろんなことが難儀になり決断できずにいるうちに不本意な状況になる。
子供や周りの人たちを煩わせるのは本意ではないですよね。
野村アセットマネジメントのホームページには、
60歳の平均余命は男性で23.6年、女性28.9年とあり、
女性の半数は90歳まで生きます。
どんな人生の終盤を送りたいのか。
その選択も、元気なうちにしかできないのだと思いました。