基礎年金掛金ゼロと所得倍増計画

 基礎年金部分は税金がいい

年金の財源は保険料と税金です。

国民年金は保険料を全く払わなくても本来の支給額の半分は貰えます。

この考え方を進めると、基礎年金部分を全額税金にしてはどうかというものです。

消費税を財源にあて、年金保険料とで相殺する。

国民年金全額免除者が受け取れる年金額は月32,500円です。

(国民年金40年加入で2020年度は月額65,000円)

32,500円ではとても生活費とはなりません。

年金以外に収入がなければ、身内の扶助か生活保護に頼らざるを得ません。 

生活保護の財源は税金です。

生活保護の受給額が国民年金を上回る逆転現象も周知のとおりです。

高齢者の生活保護受給者は今後増えることが見込まれています。

年金の最低保障が機能すれば生活保護の受給者が減り、増税幅は抑えられると、

言っているのは河野太郎行政改革担当大臣。

嘗ての民主党が唱えていた最低保障年金額は月額70,000円で、

現状の国民年金の満額65,000円よりは多い。

問題は、国民年金保険料と生活保護財源、消費税との見比べで、財源をどう調整するかです。

細かい試算が必要ですが、現状の年金額より5,000円年金額が多いのであれば、

仮に消費税が1%上がったとしてもコンセンサスが得られるのではと考えます。

また〝年金の最低保障が機能すれば生活保護の受給者が減り、増税幅は抑えられる。

そもそも年金の税財源化は保険料負担からの置き換えなので、トータルの国民負担は差し引きとんとんになる。〟 ありだと思います。

もう一つの問題は、保険料から税負担へと移るときの移行期間中に発生する財源の問題です。

公的年金は現役世代からの仕送りの賦課方式ですから、

いきなり明日から国民年金の保険料は消費税に置き換わりますとはいかないでしょう。

公的年金は、一定の積立金を保有しています。

積立金は運用収益を活用しながらおおむね100年をかけて計画的に活用していく。

このGPIFの運用資産額が、2021年第1ー4半期191兆円6,189億円に達しました。

GPIF運用資産残高《平賀ファイナンシャルサービシズ(株)》

そこで、伝家の宝刀GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の積立金を使う方法があると思います。

191兆円の積立金はまだ使われていません。

保険料を払う現役世代にしてみても、国民年金保険料(現行16,540円)が移行期間後は無くなります。

仮に16,540円に相当する消費税を1%とすると、165.4万円の買い物です。

毎月165.4万円消費するかどうかは、個々人の所得によります。

基礎年金をしっかり築いたうえで、厚生年金部分も積立方式の確定拠出年金に移行する。

それも、企業単位の「企業型確定拠出年金」です。

「企業型確定拠出年金」にすることで、企業も従業員も柔軟な制度設計が可能です。

投資信託の運用により、厚生年金の報酬比例部分相当の保険料圧縮にも繋がるかと思われます。

細かい数理計算はできませんので、あくまでも素人考えですが、

国民年金を税方式に、厚生年金部分は運用型の「確定拠出年金」に制度設計を転換する。

いかがでしょうか。

 

 大真面目に所得倍増を

日本経済の体温が上がらない背景には

「過去20年間、主要国では平均年収が実質ベースでも15~45%程度伸びたのに日本では増えていない」

思わず目を凝らして見てしまいませんか。

仮にも日本はまだGDP世界第3位のはずなのに、年収となると24位です。

「公務非正規女性全国ネットワーク」の調査では、回答した1252人のうち

昨年の年収が「200万円未満」の人が半数超。

全体の77%は年収が250万円に満たなかった。と、あります。

日本は、OECDの中で2番目に男女の収入格差が大きい国なのだそうです。

これは何かの間違いでは、とも勘ぐりたくなります。

多くの上場企業はコロナ下で最高益を更新していますが、稼いだキャッシュを成長投資に回し、

実物経済を底上げする気配はなさそうです。

日本企業は「死んだ資本」がうずたかく積みあがっている、と言うのです。

もともと「不測の事態に備えたい」として過剰に抱えていた現預金はコロナで減るどころか、むしろ積み上がった。

浮揚しないデフレ経済の根っこに、資本効率を顧みない果てなき

「ゼロリスク経営」がある。

ー2021年9月20日日経新聞朝刊よりー

「不測の事態に備えたい。」は、日本が経験したバブル崩壊の負の遺産としか思えません。それにしても、日本企業が預貯金に置いて置くだけのお金が259兆円!です。

 

 

こうして見てみると、日本企業は従業員にも株主にも報いていないようです。

 

日本企業全体で259兆円もの現金が死蔵されているなら、少しでも基本給与や賞与に回せないものなのでしょうか。

せめて、欧米に追いつくまで、大真面目に所得を上げる。労働分配率を高める。

外国からは、株主に報い投資マネーを呼び込もうとしない日本は異常な状態とみられても仕方りません。

外国の投資家だけではありません。

国内の投資家も、自国の株式をパスして米国株投資に向かい日本からお金が出て行っています。

ネット証券の売れ筋投資信託のランキング上位は、米株のS&P500、全世界株式です。

 

 社会保険料負担軽減と10%の投資

内部留保と貯蓄のお金は《平賀ファイナンシャルサービシズ㈱》

企業だけでなく、個人金融資産も1900兆円、タンス預金だけでも50兆円位あると言われています。

ひふみ投信を運営する藤野英人氏は、個人金融資産の10%、190兆円が投資に向けられれば、

日本は劇的に変わりますと言い続けています。

 

利益を生まない「死んだ資本」を抱えたままでなく個人金融資産の10%、企業の内部留保金の10%約26兆円、合計200兆円が投資に回ったなら、それだけで日本全体の活性化に繋がります。

給料が増えると元気が出ます。消費に回せます。

190兆円の投資と26兆円の消費増は、企業にとっても収益増に繋がり税収増にもなる。

「死んだ資本」も「タンス預金」もやがて、価値を減らしてしまいます。

社会保険料の負担は税金以上に大きいのです。

社会保険の負担を減らすことで可処分所得(手取りのお金)が増えます。

少しでも労働分配率を増やし、

社会保険料負担軽減のダブル効果で可処分所得が増えれば、

政府の経済政策なしでも、日本は元気になります。成長戦略の最短の道と考えます。

個人も、企業も、国もコペルニクス的転換が必要なのかもしれませんが、

でもそうしないと日本は益々長期低迷で沈んで行きます。

今こそ、頑張り時。

労働分配率を増やし社会保険料負担軽減の一助に