iDeCo加入率の底上げには

iDeCo加入率2.6% NISAは20%未満

iDeCoは厚生労働省が、NISAは金融庁が管理推奨する国の制度で、両者とも手厚い税優遇による節税額は決して見逃すことのできない金額です。

<個人型確定拠出年金iDeCoの加入者数は、2020年10月時点で176.5万人となり、全体の加入率(加入対象者数に占める加入者の割合)は2.6%となった。>出典:厚生労働省ホームページ

とは言え、iDeCoの利用者はまだたったの2.6%です。

一方で、生命保険の個人年金の加入率はその10倍です。老後資金のニーズはあるのですが、加入者が多いのは圧倒的に「個人年金」です。個人年金が悪いと言っているのではありませんが、税控除額の厚さだけをみても、iDeCoは有利な老後資金準備手段と言えるのですが、iDeCoには目が向かないようです。

NISA口座数も増えてはいますが、全体の加入率はまだ20%未満です。

 

折角の国の制度で、有利な資産形成手段であるにもかかわらず何故、普及に至らないのか。

原因は個人の事情や志向の問題ではなく、制度自体にあると思われます。

第1に入り口の問題

iDeCoやNISAの申し込み窓口は、ネット経由が主流で、生命保険販売のように対面ではありません。

iDeCoは口座開設時に年金番号・職場の証明・事業所番号が必要で、ここで躓く人も多いのです。口座開設にしても、慣れない人には申込書を完成させることからハードルが高いのです。無事申し込みが完了したとしても、次に掛け金の預け先の判断が難しい。金融知識の乏しい人にとっては、生命保険加入時のように対面で説明を受けたい制度なのです。

企業型確定拠出年金DCであれば、制度の説明があり申し込み手続きも職場で簡単に済みます。投資教育が義務化され、掛金の預け先も自分で選べるようになります。

ところが、iDeCoやNISAはそうはいきません。ネットスキルも金融リテラシー(読み書きそろばん程度の基礎知識)もある一部の人が、有益な制度を利用できるに留まったままです。

同じ確定拠出年金でも、個人型iDeCoの加入者は176.5万人、一定の段階まで人的サポートのある企業型DC加入者は765万人です。iDeCoの加入者で多いのは公務員で、加入率は公務員全体の8.6%です。(2020年10月時点)

本来ならiDeCoは、公務員に比べ退職金や公的年金の薄い中小の企業で働く人達や国民年金加入者にこそ届けたい制度です。が、実情は最も必要であろう層には届いていません。

掛金の中でアドバイス費用の負担を

現状「iDeCo」や「つみたてNISA」は口座開設にあたり加入者側にも、取り扱い側にも手数料は発生しません。従って、取り扱い窓口となる金融機関等は、積極的な販売に至りません。

iDeCoは加入時に国民年金連合会の手数料として2,829円かかります。

同様にiDeCoも口座開設時のみアドバイス料として手数料を上乗せする。ネット経由で申し込める人はともかく、対面の案内を希望する人には掛金の中に「相談料」を外枠で徴収するのではなく組み込み負担してもらいます。

iDeCoは所得税控除があるので、一時的な手数料負担は十分ペイできます。

加入者も理解できないはずはありません。掛金の中で手数料を負担してもらう代わりに、きちんとした制度説明と投資教育を必須とします。

つまり、企業型DCのステップをiDeCoに取り入れるだけです。費用を個人の掛け金の中から負担したとしても、より多くの人が口座を持てるようになり機会の喪失を免れことができます。また、NISAへの足掛かりへ繋がるのではないでしょうか。

『個人型iDeCoも、企業型DC同様一定のところまでは人を介する。』ようになれば、加入状況は変わります。

iDeCoをより多くの人に利用してもらうためには「人を介した案内」が結局は近道であり、長い目で見ると加入者にとっても、制度を作った国の意にも叶い、何より老後生活の安定がもたらす社会的効果は大きい。