「分配型投資信託」は悪か

 いくら資産があっても取り崩せない

日本の高齢者の就業率が諸外国に比べ高いことは、会社から受取れる2つの所得にも書いた通りです。

働く理由としては、生活費の補てんが一番多いのです。

定年後暫くゆっくりしていた方や、再就職を卒業された方でも、再び仕事を始めた方、結構いらっしゃいます。

 

十分な資産をお持ちの方でも、それを取り崩すのは難しいようです。

毎月1・2万円でも、今ある資産が減ることはできる限り避けたい。

それなら、少しでも働いて収入を得る方が

安心だから働きます。

 

資産運用をしている人も同じ思いです。

確かに運用益は出ている。

お金は増えているけれど、運用は良いときばかりではないので、

果たして取り崩して良いものだろうか。

 

年利4%の運用益で生活費をまかなえる 「4%ルール」は、

理解できても実践となると難しいかもしれません。

このところのガソリン価格や物価の上昇も気掛かり。

果たして年金だけで大丈夫なのか、今あるお金をどう取り崩せばよいのか。

 

 毎月分配型投資信託という選択肢

〝株式の配当金9,000円が入りました。配当金って本当に嬉しい。〟

半年ごとの株式配当金を楽しみになさっている方です。

年金世代にとって、+αの収入は金額に関わらず嬉しい不労所得です。

年2回の株の配当は、ボーナスの感覚ですね。

配当利回り2.5%の株式を1,000万円持っていると、半年毎に12.5万円、

税引き後10万円位の臨時収入です。

4%の高利回り配当株なら、1回のボーナスは20万円です。

ただ、1000万円の個別株を持つ人は少ないでしょう。

もう少し少額で定期的に受取れる方法として、分配型投資信託があります。

「分配型投資信託」と聞くと、眉を顰める方がいるかもしれません。

分配型投信は元本を取り崩す、タコ足分配の投資信託とレッテルを張られ、

悪者扱いです。

「分配型投資信託」は、名前の通り毎月(あるいは隔月など)定額の分配金を受取るものです。

投信により異なりますが、例えば、分配型投信を100万円購入すると、

毎月分配金が3,000円とか5,000円、あるいは10,000円が定期的に入ってきます。

分配金は、

①元本はそのままで、分配金は値上がり益から

②元本の一部取崩しと、値上がり分から

③元本を取崩し、分配金として支払う

分配型投信イメージ《平賀ファイナンシャルサービシズ㈱》

毎月の分配金は同じでも、

必ず元本が増えた分、利益から支払われるわけではありません。

分配金の原資は株式の値上がり益や、REIT(不動産投資信託)の分配金、債券の配当金です。

分配型投信も、分配金を高めに設定したものや、

なるべく利益のみを分配するよう毎月の分配額を抑えたもの、

<予想分配金定時型>では、分配金を基準価格に連動させ、

基準価格が一定額以下になると分配金を自動的に下げるものなどがあります。

また、今受取っている分配金が将来も保障されるものではありません。

元本も分配金も共に減って行くこともあります。

下の図は、AMPグローバルREITファンド毎月分配型 A(ヘッジなし)の推移です。

分配原資は、不動産の値上がり益や賃貸収入です。

2004年1月に10,000円でスタートした基準は2021年11月26日現在2,643円と、

75%も下がっています。

ただし、分配金込みの基準価格(分配金を受取らず再投資した場合)は33,966円と、

17年間で3倍以上になっています。

設定来の分配金合計は、1口当たり13,590円とありますので、

2004年1月に100万円でこの投資信託を購入したとすると、

既に受け取った分配金は総額で135.9万円と元本以上になります。(日興アセットマネジメント報告書より

※購入手数料等は考慮していません。

いかがですか。私は、

分配型投資信託とはこんなものと理解しています。

確かにタコ足分配で、元本は75%も減っているのですが、

17年の間、毎月キャッシュが入ってきました。

その合計はマイナスではなく、投資額よりも多いのですから損ではありませんよね。

毎月分配型投資信託は、

金融庁からも元本が目減りするので持ってはいけない投信とされていますが、

果たしてそう言い切って良いのでしょうか。

 

 銀行預金を取り崩すよりも

確かに、これから資産を作って行く世代の人には適した投信ではありませんが、

資産を取り崩して使いたい世代にとっては、一つの選択肢と言えます。

分配型投信の記事でも、元本の目減りと基準価格の下落だけがフォーカスされ、

上記のようなトータルのリターン検証を見たことがありません。

「分配型投資信託」は、

運用しながら自動的に取崩し定期的に受取れる仕組みの投信とも言えます。

銀行預金を取り崩すより資産寿命が延びることは上記の投信が示す通りです。

分配型投資信託は悪い、持ってはいけないではなく、

正しく理解して持てば良いだけです。

毎月の分配金は通信料に当てようでも、ネットフリックス代でも、月1エステ代でも、何でも使えます。

使い道を限定しなくても、

貯金通帳の目減りが少しで抑えられるなら精神衛生上良いと本気で思っています。

自分ご褒美に使えればリッチ感も味わえます。

ビル・パーキンス著

「DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール 」では、

お金を使い切らず残すのではなく、

全部使い切ってしまうことを提唱しています。

 

どうしたら、今あるお金を取崩して使うことができるのか。

結構難しい問題です。

やみくもに貯金を取り崩すことは無くても、

利益の出ているものを一部処分するのも躊躇われます。

金融資産の一部は「分配型投資信託」で毎月の分配金は心置きなく使う。

最悪ゼロになってもかまわない。(投信がゼロになることはありません。その前に繰り上げ償還になります。)

その代り残りは、NISA口座で長期の複利運用で増えるのを楽しみに。

こんなふうに分けることで、生きたお金の使い方豊かな気持、生活になるのではないでしょうか。

分配型投資信託は、定期的に入るお金を確保する選択肢のひとつです。

金融資産から、定期金を得る方法としては、株式配当でも、投資信託の定期売却でも、

お金が必要な時に都度売却でも、方法はあります。

資産運用は、貯まっていくのを眺めるだけのものではありません。

お金は使ってこそ、生きてきます。

心置きなく使える方法として「分配型投資信託」でも良いはずです。

一方的な見解だけで、「元本取崩しのタコ足投信」と断じ、

「持ってはいけない投信」とされ、それがステレオ効果でコピーされ

流布されているのを見るにつけ忸怩たる思いがしております。