誰にとっても大切な社会保険だから

 社会保険はそろそろ限界かも

先日お会いしました30代そこそこのご夫妻は、共に個人事業主です。

きちんとしたライフプランを立て、住宅ローンを払いながら、2人のお子さんを育て、

お仕事を続けていらっしゃいます。

偉いなぁ・・・。

年金を貰っている身からすると、ただただ感謝とリスペクトです。

私の周りの個人事業主さんを見ていると、チャレンジャーだなと思います。

会社員という、手厚いセーフティーネットのある世界を飛び出し、

自分の力だけで生きていくのですから。

米国で独立して自営となるときの挨拶が〝医療費払えるの?〟と聞いたことがあります。

日本の社会保障制度は先進国の中でも手厚く、

未熟なものではないと思っていますが、社会保険は〝働き方により差異がある〟

このままで本当に良いのか、そろそろ全面的に見直しの頃ではと思えてなりません。

会社員と自営業の社会保障《平賀ファイナンシャルサービシズ(株)》

夫は外で働き、専業主婦の妻と子供は扶養に入るというのは、昔の話です。

共働き世帯が6割を超え、離婚率も生涯単身者率も増えている今の時代、

社会保険は制度疲労のように思われてなりません。

 

 国民健康保険には扶養制度がない 

国民健康保険は、加入者の前提が自営業の家庭のため、

「扶養者」という概念がありません。

けれど、現在の国民健康保険は、被用者全体の4割を占める非正規社員や、

フリーランス、請負で働く人も加入者で、自営業(家業)という屋根の下で

そこそこの生活の安定が保てるわけではありません。

世帯主が失業、病気やケガで離職すると被用者保険から国民健康保険に変わります。

経済面だけでなく、社会保険上の変化も小さくありません。

被用者保険(協会健保や組合健保)には、病気やケガで4日以上休んだ時の

「傷病手当」や出産時の休業補償として「出産手当」がありますが、

国民健康保険にはありません。

健康保険は、単に医療費の自己負担が3割なだけでなく、

被用者保険の場合は生活保障保険でもありますが、

残念ながら国民健康保険はそうはなっていません。

国民健康保険は、被用者保険と同様のむしろ国民健康保の人の方が

より安定した生活支援が必要なのではないでしょうか。

国民健康保険を被用者保険並みに見直すときに、

問題なのが企業負担の保険料分を何処が見るかです。

国、それとも自治体単位なのか、加入者の負担を多くするかの、

制度そのものの再構築議論がされても、良い頃と思います。

 

 国民年金も制度が追い付かない  

国民年金の掛金は所得に関わらず一律で、

厚生年金のように

所得が増えると掛け金が上がるわけではありません。

アルバイトさんも、高額所得の自営業者も現状の掛金は16,590円です。

 

厚生年金は、事業主負担分があるだけ、

国民年金に比べ保障の範囲も広く給付も多い。

 

65歳以上で受取る老齢年金は、

厚生年金では加入期間が1年でも(見合った額を)

受取ることができるのに対し、

 

国民年金は加入資格が10年以上ないと受け取れません。

遺族年金にしても、子どもがいない妻(子供が18歳以上になると該当しない)には遺族年金がありません。

ここも、国民年金の加入者には酷なところに思われます。

今問題になっている「年収の壁」にしても、

収入が増えることによる厚生年金保険料負担を避け、

国民年金の第3号被保険者を選び、働く時間を抑制し、賃金が増えないばかりか、

企業もせっかくの労働力を生かせません。

年金シニアプラン総合研究機構理事長の高山憲之氏は、

所得に見合った社会保険の負担を提唱されています。

年間給与換算にして55万円以上*になると、全ての人が厚生年金加入者となり、

その後は所得の上昇と共に緩やかに保険料も上がって行く。

そうすることで、年収の壁はなくなる。

*給与所得控除額

同程度の年収のフリーランスの人や国民年金の妻からすれば、

第3号被保険者制度は不公平に映ります。

働き方が多様になっている中、社会保険の制度そのものが追い付いていません。

少額でも働いて収入があれば、保険料を払い、保障も給付額も充実させる。

これが原則となれば、派遣で働く人も、請負でも、第3号被保険者にも公平で、

給付も一律の規程となれば良いと思うのですが。

社会保険の持続性が問われる中、制度の中身、負担と給付を検証し、

社会保障制度全体の中で再構築し、公平な社会保障制度となるよう願っています。