8月24日に開催しました「使わないなんてもったいない 企業型確定拠出年金」セミナーで、
前日23日の日経新聞記事が衝撃的でしたので紹介しました。
“米国の家計の金融所得が過去最高に
膨らんでいる。
株式や債券など金融資産の生み出す所得は
2024年4~6月期に年率換算で過去最高の3.7兆ドル
(約540兆円)に達した。 ”
540兆円は年率換算(実際の4~6月期の金融所得の3ヶ月分を4倍したもので実際とは異なる )
ですが、それにしても家計の金融所得540兆円の数字は尋常ではありません。
2023年の日本の実質GDPは541.7兆円(内閣府:国民経済計算 )。
米国の家計が1年間で得られる利子や配当、
キャピタルゲインによる金融資産からの所得が540兆円と、日本のGDPに匹敵します。
来年度の一般会計予算の概算要求額は117兆円超とあります。
日本のGDPや予算額(いずれ歳出となる)と比べても、
米国の金融資産からの所得540兆円は、いかに巨額かです。
540兆円は個人が自由に使えるお金です。
これって、正に トマ・ピケティの唱える r>g
(r=株や債券などから得らえるリターンは常にg=グロース経済成長率を上回る)の実証では。
日本は、労働からの収入がずっと上がらず、平均賃金は主要国の最低水準です。
昨年からの賃上げの流れが今後とも続くことを願うばかりです。
米国の家計金融資産の総計 1京7812兆円からの金融所得は540兆円。
日本の家計金融資産約2,000兆円からの利子配当収入は米国の40分の1です。
日本の人口約1億2千万人、米国約3億2千万人の人口差を鑑みても、
日米家計の金融資産からの所得の差はあまりにも大き過ぎる。
401Kがあるから出来た資産
米国の個人金融資産において、最も大きな貢献をしているのは401Kです。
401Kは、日本では「企業型確定拠出年金DC」に近い制度です。
自営業や専業主婦はIRA(Individual Retirement Account)等を利用します。
401Kは社員として入社すると自動的に加入者となり、
事業主は加入者の拠出額に応じて一定額を上乗せ拠出します。
自動加入ですが、加入しない自由もあります。
401Kは、多くの従業員が職場で求める主要な福利厚生の一つであり、
401Kプランを利用している米国民の割合は、利用資格がある人の約70%に達しています。
日本の確定拠出年金とは掛金の上限が違いますが、
加入期間5年で3,000万円超、
10年で約5,000万円、
15年で6,000万円超、
と米国の401K加入者は、
退職までに6,000万円から
1億円位の金融資産を築いています。
米国では1億円は富裕層ではなく、
一般的な資産です。
401K加入者が退職後も、
運用を継続している結果が、
金融所得540兆円なのでしょう。
長期投資を根付かせるには
日本は主要国に比べ賃金も、銀行預金の金利も低く、
上がらない状態が30年も続きました。
今年からNISA制度も整備され、ようやく投資運用の機運が高まりました。
ただし、貯蓄から投資へ、
長期投資の有効性が分かったとしても、全ての個人が出来るわけではありません。
下図は、2000年から毎月一定額を日経平均に投資した場合、
2021年には115%(10倍以上ですよ!!)になった一方、
定期預金では1.3%(20年間ほぼ増えていない!)で、
貯蓄では資産形成が難しいことを示しています。
ただし、図にある通り2007年からの下落局面では積立額は定期預金を下回り、
回復までに5年かかりました。この間積立てを継続できるメンタリティーは、
いつでも止めることのできるNISAでは難しいのではと考えます。
60才まで、掛金拠出をやめられない確定拠出年金だから、
就業先の制度に組み込まれた企業型確定拠出年金だからこそ、継続できます。
下落時期があるからこそ、大きなリターンが得られる。
ここが分かるのは、やり続けた人だけです。
企業型DCは、導入にあたり投資教育が義務付けられています。
投資信託で長期に積立をすることの効果、ドルコスト平均法の意義を最初に繰り返し伝えます。
運用の継続において、投資教育の果たす役割は大きいのです。
投資への恐怖を持たれる方は多いです。
そこを克服するためにも職場できちんと投資教育を受け、
職場の仲間と一緒に始めることで不安は和らぎます。
「金融所得540兆円」とまではいかなくても、
日本も勤労所得だけでなく、投資によるもう一つの収入源を持たなければ、
築かなければ老後安心とはなりません。
そのためにも「企業型DC」をもっともっと推進しなければと思っております。