債券のパラドックス

 AT1債、誰が買っていたか 

AT1債(エーティーワン債券)って、何?

クレディスイス発行の『AT1債』が無価値になりました。

なんて聞いても対岸の火事で特段関心もありませんでした。

ところが、国内で少なくても1000億円規模のAT1債が発行されていた。

買っていたのは誰か。

 〝価値がゼロになった時点で三菱UFJモルガンでは約1500の顧客口座でクレディ・スイスのAT1債の保有があった。顧客の大半が日本の富裕層であり、一部、法人も含まれる。〟  (2023年4月14日日経新聞より)

対岸の火事ではなさそうです。

『AT1債』調べてみました。

『AT1債』は金融機関が発行する特殊な社債で、転換社債の一種のようです。

普通社債よりはリスクが高い分(破綻時の返済順位が低い)利率が高く、

クレディスイスのAT1債の表面利率は一時9%以上だったようです。

(富裕層にこういうプレミア感の高い、くすぐるような金融商品提案するんだ。)

AT1債のリスクとリターン《平賀ファイナンシャルサービシズ(株)》

このAT1債は、発行体の自己資本とみなされるため、自己資本が棄損した際に損失補てんに当てられる。

あるいは強制的に株式に転換されるもののようです。

経営失敗の補填に、預金者を守るために、AT1債を買った投資家が損失を被る。

更に、株式よりは返済順位が優先されるはずなのに、

AT1債は無価値となったのに、株式はゼロとはならない。

*次の2つのうち、いずれかの条件に抵触した場合に無価値となるという仕組みになっている。

・ 株式など損失を吸収する資本が一定の水準を下回った場合。

・スイス当局が銀行が破恐れがあるあるとみなしたり、例外的な政府支援を行ったりした場合。

クレディスイスは株価は下がったものの破綻はしていないので(UBS銀行が買収するため)、

株式を保有する株主よりもAT1債を保有する債権者の方がより大きな損失を負うようです。

前代未聞のことだそうですが、実際には起きるんだ。。。

 

 劣後債・仕組債も  

AT1債は、富裕層向けの金融商品の1つのようですが、

果たして、購入者は何処まで正確な説明を受け、理解して購入したのか疑問です。

AT1債に限らず、劣後債や仕組債はごく普通に銀行や証券会社が販売しています。

確かに、利率は高いものの高いだけの理由、

裏を返せばリスクが何かを理解したうえで購入しなければならない商品です。

劣後債は、償還期限の長いものが多く、永久劣後債は償還期限が定まっていません。

ただし、実際はコール日が決まっていて償還期限より前に償還されるものがほとんどです。

仕組債については、とても複雑で、私には説明が難しいので、

ご興味がある方は、日本証券協会の案内を参照下さい。

債券は、満期まで持つことが前提の商品です。

途中での売却は可能ですが流動性が低く、売却が出来なかったり、手数料が高くなることもあります。

「これは劣後債で・・・」と説明すると、そうだったのとビックリされます。

富裕層ではなくても、劣後債や仕組債と分からず(知らされず)に、

購入している方は少なくないように思われます。

 

 ずばり、株式の方が   

劣後債や仕組債は大手銀行やネームバリューのある企業で組成されます。

個人的には、劣後債や仕組債を買うのであれば、そこの発行体の株式の方が良いと思っています。

株式なら、毎日の値動きも分かるし、配当だって受取れる。

流動性が高くいつでも売却換金が可能で、株式なら値上がり益も期待できる。

第一、売り手側の事情*に左右されることなく、主体は購入者側にあります。

*発行体の財務状況が悪化した場合には返済が延期されたり、損失を負担したりする可能性があります。

勿論、個別株式でなくても株式投資信託でも、ETFでも同じです。

ETFなら、個別株式同様に市場で即時に取引ができます。

ETFについては、日興アセットマネジメントのサイトが分かり易いかもしれません。

株式はシンプルで分かり易く管理も簡単で、

リスクだって株価の変動とデフォルトによる信用リスクだけです。

株式の方が、シンプル イズ ベスト な金融商品と思っています。