ナッジ、背中を押すのは誰

 ナッジの法則

エスカレーターの右側を空ける、歩くを禁止するアイディアコンテストの中に

〝あなたが好きなのはご飯、パン〟の質問に、

ご飯が好きな人は右に、パンの方は左と言った具合で、左右に分かれ2列に並んで乗ってもらう。

凄くいいアイデア。

行動経済学の言う、「ナッジの法則」ですね。

相手の行動を促す、望ましい行動をとれるよう後押しするもので、

あくまでも強制ではなく自発的意思決定です。

トイレの貼り紙〝いつも奇麗に使ってくれてありがとうございます〟のあれです。

 

それが良いことだ、あるいはやらなければならないと

分かっていてもなかなか行動に移せない。

 

そこを、ちょっと背中を押してくれるきっかけがあれば、

行動変容となります。

ほんの少し、行動を変えることのハードルって、

結構高いと「確定拠出年金」の話をする中で感じます。

 

 金融リテラシーとは、難しいことではなく

折角確定拠出年金のある会社なのに、掛金の預け先はずっと定期預金のまま。

iDeCo加入も所得控除が目的で、預け先は定期預金でいい、リスクを取りたくない。

確定拠出年金本来の目的は、収益力の高い株式で、時間をかけて資産を作ることにあります。

10年どころか、20年以上積立期間があるのに現状の定期預金を使う意味はありません。

ですが、多くの人が適切な資産配分が出来ていないのが現状の確定拠出年金です。

理由の一つは、金融知識を得る機会がないままに社会人になり、

確定拠出年金の加入者となったことです。

金融知識の事を「金融リテラシー」と言います。

難しげな言葉ですが、

中身は家計管理に必要な基礎知識と金融商品を適切に選べるようになるくらいの意味合いです。

30年先に必要な資金を貯める手段として、

定期預金積立てしか選べないのは、正に金融リテラシーの問題です。

ほんの少し金融リテラシーを身に着ければ、

努力も省力化でき人生を豊かなものにすることも可能です。

 

 誰が背中を押すのか 

3月12日の日経新聞トップ記事は、「インフレが問う貯蓄神話」でした。

〝インフレが家計資産を静かにむしばんでいる。〟

〝預貯金から物価上昇率を引いた預金の購買力低下は22年にはマイナス4%近かった。〟

その上で、竹中正治教授が示した数字は驚きです。

2021年末の株式・投信の保有が現状より20ポイント高い28.7%だった場合、

家計金融資産は現状の2000兆円ではなく、3200兆円となっていた。

日米欧の家計の金融資産構成《平賀ファイナンシャルサービシズ(株)》

日本の金融資産の54.3%が現金・預金で、株式・債券・投信を合わせても16%です。

ほんの少し、お金の預け先を変えるだけで、1200兆円も資産所得が違ってきます。

少なくない機会損失です。

政府の言う「資産所得倍増プラン」は、正に「貯蓄から投資へ」運用がもたらします。

NISA枠の拡大、恒久化も歓迎ですが、それでも普及は限定的と思われます。

一部の金融リテラシーのある人だけが利用する制度となってはならないと思っています。

やはり、勤労世代の資産作りは「確定拠出年金」を如何に活用するかです。

突破口は「企業型確定拠出年金DC」なのは間違いありません。

全ての厚生年金適用事業所が「企業型DC」を持つことで、広く行き渡り、

その上で厚生年金者ではない人達のiDeCoも広がる。

望ましい行動、背中を押すナッジの役割を果たすのは企業だと思います。