ビル・ゲイツ氏の一身二生

 ビル・ゲイツ氏を突き動かすものは

先月、第9回アフリカ開発会議(TICAD9)に合わせビル・ゲイツ氏が来日し、

政府や学会、産業界等のリーダーと「グローバルヘルス」「ライフサイエンス」を

テーマとしたイベントが開催されました。 

マイクロソフトの元会長ゲイツ氏は、第一線を退いて

「ゲイツ財団」で慈善活動に注力しています。

ウォーレン・バフェット氏からの寄付が加わり

慈善基金財団体としては世界最大規模とのことです。

ゲイツ財団の使命は、

生まれた場所によって機会が決まるべきではないという考えに根ざしています。 https://www.gatesnotes.com/work/save-lives/reader/20-years-to-give-away-virtually-all-my-wealth 

ゲイツ財団は、特に途上国の子どもと母親への支援、予防可能な死をなくすこと、

貧困から人々を救うことを重要な目的としています。

そのゲイツ氏が、

「財団の資産と私財を合わせて2000億ドル(約30兆円)を2045年までに使い切り財団を店じまいする。」

と表明しました。

ゲイツ氏の決断の理由には、

・予防や治療の手段がある病気で、救えるはずの子供の命が奪われている。

・助かっても、教育を受けられない子供も大勢いる。

・各国政府の資金の削減(医療・保健の支援縮小や中止 )

・トランプ大統領による途上国への人道支援機関 米国際開発局(USAID)の縮小

「むしろ心配なのは高率な関税がもたらす間接的な影響だ。

関税が経済に打撃を与えれば、支援に回せるお金は減る。

地政学的リスクに伴う国防費の増額も同様の結果を生む。

子供を助けるために使いたいお金が割を食うこともあり得る」

ゲイツ財団は、支援を通じて8200万人もの命を救ったとあります。

それでも、すべての人々が健康で、

生産的な生活を送るグローバルヘルス(国際保健)の

目標達成には政府の支援なしには難しい。

 日本の貢献

ゲイツ氏は、「これまで日本がグローバルヘルス分野で発揮してきた

リーダーシップに敬意を示すとともに、

国際社会の安定と持続可能な発展に継続的に貢献していくことを期待します。」

 

・住友化学株式会社は、

マラリア予防用の殺虫剤処理蚊帳を

80カ国以上に約3億枚配布し、

マラリア感染率の減少、

雇用創出に貢献しています。

・富士フイルム株式会社のAI搭載の携帯型X線装置は、

結核終息が重要な社会課題となっている70か国以上で導入され、

僻地でも結核スクリーニングが可能となり、

結核罹患者の早期発見に貢献しています。 

その他にも、AI、医薬品開発、診断技術、感染症の予防・治療など、

日本の研究開発がもたらしている具体的な成果、貢献を称賛し

日本が引き続きリーダーシップを発揮することへの期待を表明しました。 

ゲイツ氏は、「研究の成果はその研究を行う企業を超えて

社会全体に大きな利益をもたらす。」とも、述べています。

 一身二生

今年はマイクロソフト創業から50年、

ゲイツ財団発足から25年、ゲイツ氏は今年10月で70歳になるそうです。

マイクロソフトは、文明のギアを1段も2段上げ、

生活や仕事を一変させた会社です。

ゲイツ氏は創業者、CEOとして世界のトップ企業に育て上げただけでなく、

一代で築いた資産とこれからの人生を慈善事業に投じるようです。

ゲイツ氏は、「グローバルヘルス、貧困問題だけではなく、

気候変動やAIを活用した様々な問題解決、認知症と戦う取り組み、

教育など、今後20年間ゲイツ財団は可能な限り多くの命を救い、

誰もがより良い人生を送ることを目指します。」と、野心的です。

自国第一主義者が闊歩し、弱者が追いやられる中で、

ゲイツ氏の存在は救いであり希望です。

そのゲイツ氏も、「素晴らしいパートナーがいなければ、

どれも実現できなかったことを確信しています。

世界中の多くの人々に支えられています。」と、

ゲイツ氏に呼応し、一緒に取り組んでいるパートナーに感謝を述べています。