星野富弘さんの眼差し

わたらせ鉄道とバスを乗り継ぎ、山あいの星野富弘美術館を訪れました。

体育の教師だった星野さんは50年前に首から下を全く動かすことが

出来なくなる重い障害を負い、

口に絵筆を持ち、身近な植物や生き物を絵と詩で描いてきました。

星野富弘美術館《平賀ファイナンシャルサービシズ(株)》

星野さんの詩画は絵葉書などで目にすることがあっても

それ程の思い入れもなく、口で描く画家の奇麗な花の絵くらいの想いでした。

が、肉筆の詩画絵の前に立った時から、私の勝手な観念が吹き飛びました。

本当に絵筆を口にくわえて描いた、重い障害を持った人の作品なの。

「一輪の花からこんなにくみ取れるの」「なんでこんな詩を紡げるの」

「この絵にはこの書体でこんな配置をするんだ」・・・

展示室を進むにつれ、星野富弘さんだからこそ描けたのだと思い至りました。

 

以下は、星野富弘氏の著書『ただ一つのものを持って』からの3篇です。

 

ーなずなー

神様が たった1度だけ

この腕を 動かして下さるとしたら

母の肩を たたかせてもらおう

風に揺れるぺんぺん草の実を見ていたら

そんな日が本当に

来るような 気がした

ーきくー

よろこびが集まったよりも

悲しみが集まった方が

しあわせに 近いような気がする

 

強いものが集まったよりも

弱いものが集まった方が

真実に近いような気がする

 

しあわせが集まったよりも

ふしあわせが集まった方が

愛に近いような気がする

 

ーむくげの花ー

なんだろう人が走って行く

良いことだといいのに

 

あっ、雨

なんだ雨か

わぁ ‼ 雨だ

下図は、「ねこじゃらし」 と 「畔道の草」 特に好きなページです。

 

ーキンモクセイー

花が咲くのは 年に一度

後は静かに 時を待っている

 

あくせくするのは 止めよう

一度でいい ひとつでいい

 

 

 

秋に金木犀と出逢ったとき、

今までとは違った感情が湧いてくるかな。

 椿も、レンギョウも、竹に出会っても、

星野さんの眼差しを思い浮かべそうです。