山崎元氏と大江英樹氏

正月元旦の能登半島地震からひと月余り、復興は進んでいるのでしょうか。

ニュースでは、水道は1ヵ月ぶりに復旧したものの、仮設住宅はまだほんの僅かで、

建てる場所がないなどまだまだ厳しい状況に変わりはないようです。

1月1日、もう一つ震撼させられたのは経済評論家の山崎元氏と

経済コラムニストの大江英樹氏お二人が同じ日に亡くなられたことです。

お二人とも実際にお会いしたこともあり、

仕事上の水先案内人のような存在だったかも知れません。

山崎元氏と大江英樹氏《平賀ファイナンシャルサービシズ(株)》

 山崎元さん

山崎氏は近年「長期・分散・積立て」を口にされましたが、

出会った頃は積立運用に否定的な人、

一括投資の方が有利、と主張するイメージが強いのです。

山崎氏は、経済の成長、時間と共に株価は上昇するのだから、

ちまちまとした積立てより一括投資の方が効率が良いとの論です。

確かに、過去20年でS&P500米国株は約7倍、

MSCIオールカントリーは約4倍、日本株TOPIXは約2倍となっています。

S&P500 MSCI TOPIX《平賀ファイナンシャルサービシズ(株)》

この20年、3指数を見る限りでは山崎氏の説に軍配が上がります。

一方で、日経平均は1989年の終値38,915円を回復していません。

山崎氏は先鋭的で辛口な論調ですが、根本は株式投資の重要性を訴えているのです。

「資本家は労働者に余剰価値を支払わず、不払い労働を強いている。

労働者こそ宝くじを買ったり、余分な保険に入るよりは株式と上手く付き合うべきだ」と。

「人々はいろんな意見を必要としているから、

その中で一番辛口で正確を目指している。」 とは、闘病中の弁です。

なんとも、お見事でそれだけに悔やまれます。

 大江英樹さん

大江さんは同年齢で、その意味で目線の高さが同じだったかもしれません。

証券会社時代に企業型確定拠出年金業務にも携わり、共感も多い方でした。

昨年8月頃から入院生活が始まりましたが、お金に対する不安はそれほどなかった。

決してお金をたくさん持っているわけではないが、

どうして不安がそれほどないかと言えば、ひとつにはご自身の収入と支出を把握していたから。

それから「高額療養費制度」のおかげで3カ月間の毎月の負担は、

平均してならすと7万円ちょっと。

どんなに医療費がかかっても自己負担は一定額で過度に心配する必要はなく、

制度を正しく知って上手く利用することが必要と仰います。

高額療養費制度《平賀ファイナンシャルサービシズ(株)》

健康保険に入っているのだから最低限200万〜300万円くらいの預金があれば、

よほど特殊なケースでない限り、それほど心配することはない。

それよりは、お金を減らして「財産」を増やそうと仰います。

自分の持っている財産・知識・経験を若い人に移して行く、

お金もどんどん使って行く。

大事なものから手放すと何もないから思い残すことなく死ねる。

なるほど!

大江さんはご自身で作られた資料も我々FPにどんどん使っていいよ。

どうぞご自由にお使いくださいと仰いますので、遠慮なく使わせて頂きます。

大江英樹氏作成資料《平賀ファイナンシャルサービシズ(株)》

自分が病気になり、一時は死を意識したこともあったが、

その時に考えたことは

「結局、人生の最後に残るのはお金ではなく、思い出しかないんだな」。

好きな事やりたいことには大いに使っても、

見栄や義理に使うことはやめておいた方がいい、とも。

「お金」を減らして、手に入れることのできる本当に大切な財産は、

・仲間 ・信頼 ・思い出 ・幸福感

人生の目的は、お金持ちになることではない「幸せに生きること」

大江英樹氏作成資料《平賀ファイナンシャルサービシズ(株)》

 山崎元さんも大江英樹さんも

お二人とも医療費は高額療養費制度でそんなに負担ではなかったようですが、

入院中もお仕事の関係で個室を使われ、その個室代は100万円以上でした。

そこは金融資産からの支出で、ためらいなく使われたようです。

長年金融業界で活躍されたお二人は、投資とは世の中にお金を回すこと、

人にお金を使うことに繋がり、廻り回って自身にも戻ってくる。

自分が働けないときも運用によるリターンが見込めることを、

何より伝えたかったかもと、想像しております。

山崎元さん、大江英樹さんのご逝去を悼みご冥福をお祈りいたします。